保育園デザイン 不利な敷地(狭小地・変形地・高低差)に保育園を建てる。

ユーザー 株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘 の写真

◯敷地の三重苦(狭い・変形・高低差)が課題でした。
定員70名の保育園です。敷地は川崎市溝の口駅にほど近い多摩丘陵東端部の斜面地に位置しています。北側に園庭として活用できる公園の森が眼下に見渡せる絶好のロケーションです。
しかしこの敷地には大都市近郊の丘陵地が抱える3つの大きな問題がありました。

・間口が狭く奥行きが長い狭小地
・奥行き方向中央が極端にくびれた変形地
・南北で8m(2層分)もの高低差がある

敷地の持つ狭小・変形・レベル差という三重苦を抱え、さらに認定保育園の基準を満たす必要から以下の3つのコンセプト柱にデザインいたしました。

1.伝統町家に学ぶ配置構成
      =『通り庭』のある保育園

2.高低差を効果的に利用した断面構成
      =子供達の『天空の城」
 
3.フレキシブルに使える保育室
      =トイレが中心

敷地

◯敷地は狭小・変形・高低差8Mの三重苦
三重苦の他に画像のように隣接する擁壁(土留)基礎が敷地内に大きく張り出していました。
このようは敷地形状はは大都市近郊の丘陵地では決して珍しいものではありませんが、許認可保育園の条件を確保するには大変大きな問題を抱えていました。
擁壁自体は敷地内ですが、これを作り変えるほどの予算はありませんでした。そこで上層階を擁壁上に浮かせて張り出して必要面積を確保しました。

通り庭通路

◯伝統商家に学ぶ配置構成=「通り庭』のある保育園
間口が狭く奥行きが深い敷地は伝統建築である商家「町屋」に似ています。伝統に学ぶことで機能的で魅力ある空間構成をつくりました。
中央が狭くくびれた変形地であることから南北に縦断する通路「通り庭」を中心に主要室を南北面の敷地は広がった部分に配置しました。「通り庭」は、保護者の待合、展示、読み聞かせコーナー、映像シアターなどコミュニケーションを誘発する活動的な空間です。吹き抜けを介して上下階の気配が伝わります。

断面構成

◯傾斜地を効果的に利用した断面構成=子供達の『天空の城』
緑に面した傾斜地を効果的に利用して北側に森の自然を感じる屋上やテラスを配置しました。公園から見上げると森の上に赤い保育園が浮かぶ「天空の城」に見え、シンボリックな景観を作り出しています。
(混構造の保育園)
急斜地の特性を利用して保育園の主機能を木造で地上階(1.2階)に配置し、地面に埋まる地下をRC造で職員休憩室兼地域交流スペースと身障者送迎用の車庫を配置しています。園庭に利用する公園へはエレベーターを使って直接アプローチできます。

フレキシブルに使える保育室=トイレが中心

◯フレキシブルに使える保育室=トイレが中心
2階の保育室は狭い空間をフレキシブルに使える世界樹の根元をイメージした広場としました。大きな樹木をくりぬいたようにトイレが中心あります。天井から木漏れ日が入り風が抜け、トイレが行灯のように光を届けます。世界樹の周りを子供たちは元気にぐるぐる回ります。保育士は移動することなくトイレに行く子供を見守れます。広場はどこからでもトイレが近く、可動家具で員数の変化や活動に合わせて自由に仕切ることができます。

◯食育の場 森に抜けた食事室
北側の公園の緑に開いた食事室です。家具などこの保育園のために特注しました。勾玉のデザインは様々な使い方ができます。

職員休憩室・地域交流スペース

◯職員休憩室・地域交流スペース
急斜地の特性を利用して地1階に職員休憩室兼地域交流スペース(コワーキングスペース)を設けています。同一施設の別の空間であり、保育園と切り離された空間と時間の中で交流が生まれ”あたらしい何かが生まれる事”を期待しています。