住宅設計のコツとは
「住宅設計のコツって何ですか?」
と学生や若い設計者から聞かれることがありますが、正直コツなどありません。
駄洒落や冗談に聞こえるかもしれませんが、コツコツやるしか方法はありません。
ただし、私が住宅設計において常に心掛けていることが二つあります。
ひとつは、住宅を建てる敷地(土地)を十分読み込むことです。
敷地は、二つとして同じ敷地は存在せず、ひとつひとつの敷地が唯一であることを認識することが重要です。
たとえ、宅地開発された分譲地で隣り合う土地が同じ広さの土地であっても、それぞれ位置が異なり、隣地の状況も違うのです。
では敷地を読み込むとは具体的にどういうことかと言うと、その敷地が持っている情報を細かく拾い上げて分析をするということです。
敷地内の高低差、道路幅員、方位、敷地境界はじめ電柱や電線、マンホールの位置、敷地の真ん中に立って東西南北の状況(隣地、隣家、眺望等)といった目視で確認出来る情報と目に見えない法規的な情報(建ぺい率、容積率、高さ制限、斜線制限等)を調査分析することが重要で、これらをしっかり把握することが敷地を読み込むということです。
敷地へも時間をずらして何度も足を運ぶことで得られる情報が異なり、設計の手がかりが増えることも多くなります。
もうひとつは、建て主さんへ住まいに対する希望や要望を伺うヒアリングで、細かい部分に至るまで詳細にご家族の皆さんから伺い、新しい住まいに求めているものを引き出すことです。
したがって、住まいに関することだけではなく、普段の日常生活や休日の過ごし方、家族それぞれの趣味といった込み入ったところまでヒアリングで伺います。
かといって、建て主さんからの要望をそのまま丸ごと受け入れるようなことは決してせず、本当にこの家族の住まいに必要なことは何なのか、ヒアリングでメモした内容を十分咀嚼して読み解くことを心掛けて設計しています。
以上の二つが住宅設計を行ううえでの大切な柱というか幹であり、住宅設計のコツは設計に入る前の情報の分析と整理ではないでしょうか。