スキップフロアの空調計画
スキップフロア(および吹抜け)の空間について、魅力的な空間にできる反面、「建築家の建てる住宅は寒い/暑いからね・・・」なんて悪口を言われないよう、温熱環境の設計には特に気をつけたいところです。
空調計画についてはいくつか方法があるのですが、まず一番大事なポイントは「建築の外皮の断熱性能をちゃんと上げる」ことです。できればZEHレベルまで。昨年設計しましたフルリノベの住宅では、ZEH基準に合うよう屋根断熱のグラスウールを200mm入れたのですが、これが真夏の外気温36℃で瓦屋根の下でも、全く熱気を感じず、設置したエアコンは26℃設定の弱運転で全く問題ない快適さでした。空調計画は大事なのですが、それに先んじてまず一番大事なのは断熱性能。
本題に戻って空調計画ですが、夏は比較的カンタンで、なるべく高い位置にエアコンを設置してそこから冷気を出せばOK。局所的に南や西に面して大きい窓がある場合などは、そのペリメーターゾーンに向けて、エアコンの冷気をサーキュレーターなどで当ててあげれば尚良し。 他の方法としては変化球ですが「PS」という除湿型放射冷暖房もあります。こちらもスキップフロアのような空間ではとても快適ですが、ただ外気温32度くらいまではかなり有効だと思いますが、本当の真夏=外気温36℃以上になってくると、これ単体だとちょっとしんどいかもですね。
一番の問題は冬。こちらについては暖かさの好みとイニシャルコスト・ランニングコストを考慮しつつ、以下が選択肢に上がるかと思います。
①エアコン:夏向けには高い所に設置を推奨しましたが、冬向けにはなるべく低いところに設置すると効率が良いです。スキップフロアということは当然1台だけで何とかする計画にはならないと思われるので、高い所に1台・低い所に2台とかの配置だとベターかもしれません。最近の設計では基礎部分にエアコンを仕込んでおいて、床下から暖気が吹出すような設計の建物も見受けられます。なるべく下から吹出して、全館空調的に家全体を温めるのが良いですね。
②薪ストーブ:やはり直火は強い!ということで、薪ストーブもオススメです。こちらも全館空調を意識するのであれば、下階のどこかに設置することで家全体に暖気が回ります。ただ意外と薪代は高いので、薪の調達方法として「買う」だけだとランニングコストはかなり悪いと思います。知り合いや親戚が山を持っていて定期的に薪をもらえるなど、何かしらのお金のかからない調達方法があれば最高です。ただ正直、煙突掃除も含めて手間はかかります(笑)
③床暖房:温水タイプや電気タイプがありますが、直接身体が触れる「床」が暖かいと、室温以上に快適に感じるかと思います。全館空調的というよりは局所暖房的。オススメですが、温水タイプは初期費用150万〜/月々1万〜、電気タイプは初期費用50万〜/月々2万〜という金額感なので、比較的コストはかかるイメージです。
④ラジエータ型 or パネル型ヒーター:こちらは全館空調的に家のあちこちに配置して温める方法と、局所暖房的に人が集る場所にだけ設置する考え方があると思います。床暖房と同じ様な金額感です。
⑤原始的な局所暖房器具:あくまでしっかりと外皮性能を上げた上でですが、人がいる場所だけ昔ながらの石油ストーブで温めたりということで、場所によっては意外とイニシャルコストもランニングコストも安いという結果も出たりします。昨年設計した住宅では、吹抜け的な場所で人がいるときだけ石油ストーブを使う、という使い方をした場所がありましたが(とはいえその住宅の1/2くらいの空間です)真冬の1ヶ月で灯油代は1万円行かなかったことを考えると、結構有効なのかもしれません。