集合住宅の共用廊下を気持ちの良い場所に。

ユーザー 株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘 の写真

集合住宅の廊下です。
一般的に集合住宅では廊下は暗くて陰湿な場所になりがちです。隣人は素性が知れず、都会の孤独な生活の象徴のような場所になってしまっています。
入り口のロビーや住居内だけではなく、共用廊下こそ居心地(通り心地?)が必要ではないでしょうか。気持ちがよければ自然と隣人と会釈する程度の穏やかなコミュニケーションが生まれるかもしれません。リゾートホテルでは大変に気を使っている事例がありますが、一般的な集合住宅でそこまでお金を掛けることは難しいでしょう。そこでここでは最低限の工夫を試みています。

各住戸入り口に木目調の縦ラインを入れています。
人間は木目に安らぎを感じます。また、大してコストを掛けずに施工もできます。このラインに表札やインターホンなどを内蔵させています。住戸毎にラインがありますので、廊下を移動すると代わる代わるラインが現れます。この事例では建物を微妙に湾曲させていますので、その効果は絶大です。

外壁側の縦長窓の上部(天井部分)を一段折り上げ天井にしています。
照明器具や設備などが天井裏に無い部分ですので、天井を折り上げることができます。これによって縦長のサッシから光が差し込みます。また、廊下特有の閉塞感を無くすことができます。ここでは、構造体である柱を丸柱として外壁から独立させているので、開口部を自由に外壁に開けられるようにしました。こういった構造と壁面が分離した状況は現代建築が獲得したテクノロジーでもあります。

外壁側の窓は腰壁を作らず、床から天井まであるフルハイトサッシにしています。コスト上大きな窓ではありませんが、せめて光をたくさん取り込むと同時に、床面にも十分光が差し込むように配慮したものです。

あまり気を使わない部分でもリビングの設計同様に人間の空間として丁寧にデザインすることは大切なことなのです。