FU-PU 風布 ー 風のとおりみち ー
キッチンよりプライベートスペース方向を見る。簡素な間取りと素材感あふれるシンプルな室内。
撮影:堀内広治
マンション1室のフルリノベーションの依頼でした。
改修前は、複数の個室に細かく間仕切られていた為、風通しが悪く、
特に北側の室は、日中でも薄暗い寒々しい空間でした。
明るく風通しのよい空間とすること、自ずとこれが設計の重要なテーマとなりました。
これに加え、建築主からの主な要望は次のようなものでした。
・建築家の設計らしい重厚感のある空間にしてほしい。
・床は無垢のフローリングにしてほしい。
・水廻りなどの設備類も一新したい。
・コストを出来る限り抑えたい。
不要な壁を全て取っ払い、南北両方に窓があるという、この室の最大の特徴を素直に活かした
オープンな空間を提案しました。南北に爽やかな風が走り抜ける、風の通り道のような空間です。
コンクリート構造壁と水廻りスペースの間仕切壁以外、天井まで届く壁は一切設けていません。
オープンな空間は、引戸や什器、布製パーティションなどによって適度に仕切られ、適度に繋がります。
玄関ホールであり、アトリエとしても機能する土間スペースと室内との境界部に設けた風布(布製パーティション)は、依頼主の好きな「青」をテーマにオリジナルにデザインした柔らかい布の壁です。染め時間を変えることで1枚1枚異なる濃淡をもたせた藍染めの長いショールのような布をただ並べただけのシンプルな布の壁は、玄関ホールからの視線を適度に制御するほか、ゆらぎ、ひらめくことで、風という見えない空気の流れを可視化し、涼感や癒しを与えます。
内装については、素材感あふれる重厚な空間をテーマに、墨入モルタル、コンクリートブロック、杉の足場板、鉄粉の錆塗装、ウォールナットの無垢フローリング、バイブレーション仕上げのステンレス板、ラワン合板などなど、個性あふれる素材を適材適所に使い分けています。
コンクリートの構造体には敢えて塗装などの仕上げを施していません。一部、壁紙の下地であったモルタル壁に白いパテの痕も残りますが、これもこの室の歴史=味として敢えて残しています。
良い意味でざっくりとした簡素な間取りと、個性あふれる素材で構成した空間は、余計な飾りを必要としない「素の空間」となりました。
土間スペースより室内を見る。写真手前のブロックと足場板で構成した什器は、靴収納(玄関側)およびTV台(室内側)として機能します。
撮影:堀内広治
プライベートスペースよりキッチン方向を見る。奥の褐色の壁は、鉄粉入りの塗料を酸化させた錆の壁です。
撮影:堀内広治
プライベートスペースよりリビング方向を見る。通気、採光の為、収納の壁は天井まで敢えて立ち上げていません。
撮影:堀内広治
キッチンより室内全体を見る。土間スペースと室内との仕切りは、ブロックと足場板で構成した什器(靴収納+TV台)です。
撮影:堀内広治
キッチンより室内全体を見る(風布あり)。風布により土間スペースと室内とを適度に仕切り、適度に繋げています。
撮影:堀内広治
土間スペースより室内を見る。土間スペースは、玄関ホールとしてのほか、アトリエとしても機能します。
撮影:堀内広治
土間スペースより室内を見る(風布あり)。床は、黒い墨入モルタルの塗り床です。防塵処理によりアトリエにも最適です。
撮影:堀内広治
ダイニングより土間スペース方向を見る(夜景)。風布のゆらぎが床面に映ります。
撮影:堀内広治
プライベートスペースよりダイニング方向を見る(夜景)。キッチンカウンターやテーブルもオリジナルに製作しています。
撮影:堀内広治