美山のK邸改修
築100年以上の茅葺き民家の改修である。
周辺建物でも工業製品化された外壁材が多く使われる中、この家では腰壁を無垢板張りに塗装、腰上の壁を漆喰塗りにするなど、周辺の景観に対する配慮も行った。
「長年風雨の影響を受けているため、構造部分の腐食も確認できていたため、構造部分にも手を入れること。
また田舎では、昔から様々な儀式祭礼が家で行われてきたことにより、玄関のある南側にハレの間として和室が配置されたため、生活のスペースは北側に配置されており、どうしても暗くなってしまう。
このため、今回の工事部分である北側はできるだけ明るくしてほしい。」
増築等はなく、既存空間の改修工事である。
昔の民家は現在のような基礎ではなく、いわゆる玉石基礎となっており、自然石を地面に据え、その上に柱を立てている。
このような構造のため、長い年月を経て部分的に基礎が下がると、当然その上に載っている柱梁も下がってしまう。
そして、その都度補修改修をしていないため、ズレの上に増改築を繰り返している状態となっていた。
限られた予算の中で、どこまでを補正して改修を行うかが難しい計画であった。
長年風雨の影響を受けているため、構造部分の腐食も散見し、部分的には構造材の取り替えや現代工法での基礎のやり直し等、大掛かりな工事となった。
新たに手を加えた部分は、建物全体に対して、主に北側の部分である。
この茅葺き民家はこの地域の民家のほとんどがそうであるように、南側に玄関があり、玄関から北側の台所まで続く土間の片側に厩(うまや/多くの民家で既に部屋として改修されている)と呼ばれる部屋がある。
そして、その反対側には、田の字型に建具で仕切られた4室があり、南側2室を仏間・次の間、北側2室を居間・寝室という構成になっている。
これは、昔から様々な儀式祭礼が家で行われてきたことにより、玄関のある南側にハレの間として和室が配置されたためであり、現在でも法事などの法要は家で行うことが多いため、南側2室の和室は改修されないまま残されていることが多い。
こういったことから、プライベートな空間は北側に追いやられ、日常の大半を過ごす空間があまり陽の入らない暗い空間になりやすい。
今回は昔からの柱梁を尊重しつつ、壁・天井は白を基調とした配色とし、床は落ち着いた空間となるように茶とした。
古民家の良さの1つは、間仕切りで空間を仕切っているため、場合に応じて大きな空間にもできることである。
今回は和室には障子戸、その他の部屋にはレースカーテンを用いて空間を仕切り、古民家の良さを損なわないような構成とした。
また、予算が限られていたため、今回工事で手を加える天井・壁等は最小限とし、30年程前の改修の際に余っていたサッシを利用する等工夫をした。
そのような限られた予算の中でも、少しでも暮らしやすくするため、可能なところには断熱材を入れ、空間の質を損なわないように、要所では漆喰塗りを施すなどの配慮をし、とりわけ屋外部分は、腰壁を無垢板張り、その上を漆喰塗りにするなど、周辺の景観に対する配慮も行った。
PHOTO:Masato Mitsuya
PHOTO:Masato Mitsuya
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