K邸 ―杜の筒/天空の筒―

●設計事例の所在地: 
東京都品川区
●面積(坪): 
52.2
●建物の種類(大分類): 
住宅関連
●メインの画像: 
●メイン画像の説明文: 

杜の筒/天空の筒がわかる西側外観
水平の「杜の筒」の向こうに垂直の「天空の筒」の頂部が見える。西側は西陽を遮る壁で開口部は最小にしている。

建てる前に依頼者が悩んでいた事・ご希望: 

敷地のロケーションは、品川の海に向かう武蔵野台地の突端のひとつで、南東に下がる地形の頂部で後ろは神社である。この条件をどう生かすかが求められた。

依頼者があなたに依頼した決め手: 

設計者の自邸である。

●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など): 

北側には道路があるのでLDを筒状の空間にして2階に上げた。そのわきに1階から3階までのトップライトを持つ筒状の階段室を造った。神社の緑に向かう水平の「杜の筒」と空に向かう垂直の「天空の筒」が建物の中心を構成する。
「杜の筒」は日照とプライバシーをコントロールできるので、一年を通じて開放的で快適なLDを確保し、「天空の筒」は室内に光と風を取り込んでいる。このアイデアは2011年のパッシブデザインコンペ入賞という評価を受けている。(パッシブデザインとは、設備機器によらない建築的省エネ工夫設計です。)

依頼者の声: 

「杜の筒」は夏の日差しをコントロールし、冬は天気が良ければ日差しが床を温めるので暖房が要らない。南北両側が緑という贅沢な環境を楽しんでいる。

その他の画像: 

「杜の筒」の断面図
「杜の筒」は両端を夏至正午の太陽角度で切られている。こうすることで真夏でも終日ブラインドを下げる必要がない。冬は陽が入り暖房が要らない。北側は道路斜線をクリアし、陽を受ける明るい杜の緑を楽しむことができる。

「杜の筒」LDから北側の杜の緑を見る
北の緑は陽を受けて明るく美しい。バルコニーの手すりはシートを貼った擦りガラスで道路からの視線をカットしている(断面図参照)。一年を通じ北側も南側もブラインドを下ろさずそれぞれの緑を楽しむ生活ができる。 トップライトからの光が落ちる「天空の筒」の階段がガラススクリーンの向こうに見える。

「天空の筒」と階段
階段は鉄筋と透明FRPの段板で視線と光と風が通る。夏はトップライトの上に紫外線95%
カットのテントを張り、柔らかな光を取り入れる。

「光の掛け軸」のある和室。 
床の間の裏に照明が入れてある。消えているとただの和紙の壁で軸をかけることができる。点灯すれば「光の掛け軸」が出現する
この他にも伝統的材料と現代の材料が対比的に使われている。アルミ天井と竹の天井。ブラスト仕上げの鏡の腰壁と塗壁そして柿渋の建具など。材料の対比が楽しい数寄の空間を創っている。

和室の床の間
「光の掛け軸」を消灯すれば、和紙貼りの壁となる。

庭に面する明るい水廻り
水廻りは生活の大切な場でいつも良い場所を占めることになる。この浴室も1階中央の庭に面する場所にある。窓は床から天井まで開き庭を見れる。窓の内側に引違の乳白ツインカーボ板が吊られていて、夜は照明器具となる。奥の洗面はガラスで浴室と一体的空間であり、西壁のガラスモザイクタイルが朝陽を取り込む。

夜の浴室/洗面
照明が乳白ツインカーボ板の外側天井内にあるので、点灯すればパネル全面が発光する。

設計者

ユーザー 加藤隆久都市建築事務所 野室 丈明 の写真
オフライン
Last seen: 7年 6ヶ月 前
登録日: 2017-02-10 17:30