軒並の小径
細い袋小路状の通りに面する、夫婦とその子供2人のために計画した延床面積33坪ほどの小さな住宅の計画。
敷地は、兵庫県芦屋市の南に位置する。六甲山から芦屋浜へと注ぐ芦屋川の砂質土が堆積してできた扇状地と推測され、やや海に近い場所である。そのため地盤は若干軟弱ではあるが、芦屋の中では、比較的起伏の少ないなだらかな地形が形成されている。大きな通りから見ると、歩道から10mほど分岐した42条2項道路に接する。道路入口で幅員は2mを切る狭さで、重機類もほとんど入ることはできない。従って、当初から建て方も手上げになると想定し、大きな材がでないよう、できるだけ細切れなボリュームで計画を行った。結果として、4つに分けて棟を連続させ、施工性やローコスト化に配慮し、現状のヒューマンスケールな街路に沿って、両隣の建物と一体となって軒を連ねる形状をとっている。さらに、路地裏的な雰囲気をより強調する為、又、南側に出来るだけ広く庭を確保する為、天空率で道路斜線の緩和を受け、北側の道路境界際ギリギリまで建物を寄せている。そのため、道路幅員は法的に求められた拡張に対応しながらも、後退前の両隣の既存不適格建物との外壁面は綺麗に揃っている。ここで、分割されたボリュームのそれぞれに対し、道路斜線に抵触する箇所を中心に、天空率が有利に働くよう其々の棟の高さの再検討を行った。周囲に住宅が密集した地域であることから、開口部も、隣の家と重ならないよう、建物と建物の間に隙間が空いているところは、その余白を狙うよう調整している。道路に迫った建物は、通りに対し威圧的にならないよう、ファサードの南の空地や空へ向けて開きながら、ピロティやハイサイドライトをリズム感をもって配置してゆき、太陽の直射光の明るさと視線の抜けを北側道路まで引き込んだ。また、高さの異なる軒を連続させると共に、外壁のテイストも周囲と合わせることで、周辺環境との同一化を計っている。こうして1つの住宅の装いが、その場所の風景をなぞらえたかのように、街並みの中に上手くフィットしながら、狭い袋小路の環境全体を、より整った自然な様相へとアップデートすることができないかとス試みた。
ホール
吹抜
書斎
階段
ダイニング
和室
外観
夜景