記念碑の家
60代御夫妻のための終の棲家です。身体的な負担を減らすユニバーサルな設計を中心に据えながらも、第二の人生のはじまりの記念碑として、白くモダンなデザインを求められました。
「若さとは自分の心に宿るもの」御夫妻の力強い言葉と、これからも前向きに人生を楽しもうとする姿勢に感銘を受けた仕事です。この考え方は誰にでも当てはまるものではないかわりに、住まい手の生き方によって実現した住宅と言えるかもしれません。
湘南の空に映える、白い箱のような家に住んでみたい。はじめてお目にかかったときにいただいたリクエストです。便利なだけではつまらない、自分が美しいと思える空間に住むことが希望。
こどもたちがいたときはそれなりに住みやすい家でよかったが、60を迎えての家づくりはこの先の人生を楽しむための家にしたい。年寄りじみたバリアフリー然とした家は好まない。
家づくりのリクエストをお聞きして、正直お引き受けしてよいものか戸惑いもありました。しかしよくよくお話を聞いてみると、デザイン優先で実際の使い勝手を犠牲にすることではなく、家としての性能や快適性、使いやすさ、居心地のよさ、バリアフリーに見えない家だけれどしっかり工夫がしてあることなど、当たり前のことはきちんと設計し、デザインとのバランスをしっかりとりながら取り組んでほしい、という施主の言葉にお応えしたいと思いました。
外観は白くモダンなデザインですが、内部の階段は幅を広くとり、段数を増やし、とても登りやすい緩やかな階段にしました。手すりは細くても強度が出るステンレスを使用し、階段としての美しさを損なわないように工夫をしました。また、玄関やトイレなど、今後必要になる手すりを設けましたが、床から天井まで1本物でデザインし「手すり感」を消しています。玄関や廊下なども広くとり、車椅子でもゆったり回転できるスペースを確保すすとともに、普段は「ラウンジ」として使えるようにしました。また各部には隠れた収納を多く配置し、物がしまえてスッキリと見えるようなインテリア計画を行いました。照明は間接照明としながら、年齢による視覚の変化を考慮した照度、色温度で設計しています。