地下一体型インナーガレージのある家
南北を道路に挟まれた敷地の高低差を活かして地下1階を鉄筋コンクリート造とし、その上に木造2層を載せた地上2階地下1階の専用住宅を計画しました。
インナーガレージと内玄関のアプローチは南側道路の地下1階レベルから、玄関アプローチは北側道路の1階レベルからとしています。
依頼者からの最初のメールです。
「お世話になります。初めて相談いたします〇〇と申します。
東京都国立市の擁壁がある土地を既に購入し、これから戸建住宅を建てたいと考えております。既存の擁壁は行政の確認がとれておらず、新たに建物を建築する際には擁壁撤去および擁壁新設が必要な状況です。30坪ほどの敷地面積ですが、擁壁新設の際に掘り込み車庫を施工し、上部を庭にしたいと考えております。
都内ではなかなか擁壁施工経験のある建築事務所様が見つからず、今回ご連絡しました。」
依頼者は、周辺相場より若干安く土地を購入できたものの、無届けの擁壁と地下駐車場(しかもお隣と一体で施工されていた)が残る難しい条件であるためハウスメーカーや地元の工務店に相談しても断られ途方に暮れていたそうです。インターネットで擁壁のある住宅の経験のある設計者を探し出し、当方ともう1人の建築家にメールを送ったそうです。当方では迅速に敷地状況の確認と行政との協議を計画案の作成と並行して行い、ファーストプランを提示する際には「建てられる」との確信をある程度持っていましたが、他社では「建築不可能」との判断だったそうで、結果として当方のみが残ったカタチになりました。
お隣と一体で施工されていた地下駐車場を安全に切り離してから撤去する必要がありましたが、当時の資料が殆ど残っていなかったため事前に既存駐車場の鉄筋調査を行って構造安全性の検討をした上で解体工事を進めなければなりませんでした。また高低差が3m以上あるため領域を分けて平均地盤面を算定しなければならない等、通常の検討項目よりもシビアな内容が多く、確認が下りるまでは正直胃が痛かったです。
既存解体工事費や地盤改良費、地下工事費が嵩んだため、本体工事費の予算が限られてしまい、依頼者には要望を我慢して頂いた項目もありますが、最終的には満足してお住まいになられているようで嬉しい限りです。
引越し後の依頼者からのメールです。
「おはようございます、○○です。昨日引越しの荷物の運搬を無事終えました。
引越し業者さんから、良い家だと褒められ、こんな家に住みたいとまで言って頂けました。思えば1年前、土地を購入したものの既存擁壁のある難しい敷地のためハウスメーカーや地元の工務店に断られ途方に暮れていた私たちでしたが、鈴木さんと出会うことができてこのような素敵な家を実現してもらえて本当に感謝しています。ありがとうございました。予算やスケジュールも厳しく大変だったとは思いますが、鈴木さんや工務店さんのお陰で今家族みんなが快適に暮らしています。」
玄関アプローチは北側道路の1階レベルからとしています。玄関へは階段とスロープ両方を使ってアクセスできます。
外壁は金属系サイディングとし、道路境界にはブロック塀やフェンスを設けない計画としました。
屋根はシンプルな寄棟形状のガルバリウム鋼板竪はぜ葺としました。
南側の領域Ⅱで高度斜線に抵触する南西側を一部切り欠く必要があったため南東側も同様のシンメトリーな形状としました。法的に必要な形態操作ではありましたが、結果として外観のアクセントとなったように思います。
建物周囲は砕石敷としました。減額調整で取りやめた南側テラスのウッドデッキは将来対応の予定です。
1階玄関脇の飾棚の上部には依頼者奥様お気に入りのLED照明(施主支給)を取り付けました。
1階玄関横には続き間の大容量シューズインクローゼット(SIC)を設けました。
1階LDK(リビング側)
南東側にリビング階段を計画しました。
天井は張らず現しとして構造材をそのまま見せています。
水廻り以外の床は全てアカシア材の無垢フローリングを採用しました。
1階LDK(キッチン側)
システムキッチンはIKEA製(施主支給)を大工さんに組立ててもらいました。
依頼者と一緒にIKEAへ行き、IKEAのキッチンプランニングサービスを使って実際の素材や機器を触って確かめながら決めていきました。
食材保管用の床下収納も設置しました。万が一キッチンの排水トラブルがあった場合やメンテナンスの際には床下点検口としての役割も期待できます。
LDKの西側にはTV台とカウンターを造り付けました。TV台右側部分は地下1階からの換気ダクトのダクトスペースになっています。
地下1階洗面脱衣室
壁・天井はコンクリート打放しとし、ダウンライトと間接照明で明るい空間を演出しています。
洗面カウンターはゴム集成材の造り付けで洗面ボウルと壁面のタイルは依頼者奥様がセレクトしたお気に入りです。
地下1階家族用トイレから内玄関と洗面脱衣室を見る
玄関・内玄関ともに框部分での段差はゼロとして階段以外には段差のない設計としました。浴室はユニットバスを採用しました。地下1階ですがインナーガレージ側に窓を設けたため、シャッターを開放すれば視線を遮りながらも採光と通風が確保された気持ちの良い空間になっています。
地下1階インナーガレージ
左側は電動シャッター、右側が内玄関へ続く階段です。排気ガスがこもらないよう換気扇を設けています。
アウトドアが趣味の依頼者は将来ハイエースを所有したいとのことで駐車場は広く計画しました。普通車なら2台はいけそうです。