「 T 」-玄関土間で分かつ家-
玄関土間より「公」の空間(リビングダイニング+ライブラリースペース+ゲストルーム+キッチン)をみる。
撮影:堀内広治
都内のビンテージマンション1室のフルリノベーションの依頼でした。
改修前はT字型の間取りで、Tの字の脚元先端に玄関、そこからのびる中央廊下、廊下を挟んだ左手前にトイレ、右手前にキッチン、左奥に洋室2室、右奥にリビングダイニングと障子で隔てた小さな和室、廊下の突き当たりが浴室という配置でした。
この特徴的なT字型の間取りを最大限に活かすこと、自ずとこれが設計の重要なテーマとなりました。これに加え、建築主からの主な要望は次のようなものでした。
・友人を招くことが多い為、ホームパーティーに適した場所にしたい
・招いた友人や上京した両親が宿泊できるスペースがほしい
・自宅でもちょっとしたデスクワークのできる書斎のようなスペースがほしい
・将来的に分割できる明るい子供部屋がほしい
・素材感にこだわった家にしたい
はじめて現地を訪れた際、現状のポテンシャルの高さに特に何もする必要がないと感じました。
私たちが作為的にやったことはただ1つ。小さく暗い印象だった玄関とその先につづく無駄に長い廊下を統合し、タイル貼の広めの玄関土間としたこと、これくらいです。
土間を軸に、右側に「公」の空間を、左側に「私」の空間を配置しています。家の中心部を貫く、この通り土間状の玄関が「公」と「私」に空間を明確に分かち、T字型プランをより強調します。
「公」の空間は、クライアントの求めるデスクワークスペースを確保すべく、元のリビングダイニングを長手方向に分割する巨大なマントルピースのようなモルタル製の腰高の収納を配置、その上部に設置したスチール製の格子窓とともに緩く仕切ることで、リビングダイニングに附属するライブラリースペースを新設しています。元の和室はリビングと同じ床材で仕上げ、通常はリビングの延長空間として、来客時は引戸で間仕切りゲストルームとして機能します。
「私」の空間は、限られた面積のなかで、クライアントの求める子供室、寝室、多めの収納を確保すべく、元の洋室2室の間仕切を無くして大きな正方形の空間をつくり、その中央に入れ子状に夫婦の寝室を配置、その周囲半分に子供室、もう半分にクローゼットを配置しています。
両空間で素材も使いわけ、T字型プランの特性を素直に活かしたメリハリのきいた家となりました。
玄関扉付近より玄関土間をみる。土間の奥、右側に「公」の空間を、左側に「私」の空間を配置。
撮影:堀内広治
リビングダイニングをみる。天井のコーブ照明は、四隅をアールに仕上げた柔らかな光天井。
撮影:堀内広治
ダイニングよりゲストルーム方向をみる。ゲストルームは、片引きの引戸で間仕切ることも可能。
撮影:堀内広治
リビングダイニングとライブラリースペースをみる。モルタル腰高収納+スチール格子窓で緩く間仕切る。
撮影:堀内広治
玄関土間より「私」の空間(寝室+子供室+ウォークスルークローゼット)をみる。
撮影:堀内広治
将来的に2部屋に分割予定の子供室をみる。若草色の黒板塗装で仕上げた壁の裏側に夫婦の寝室を配置。
撮影:堀内広治
子供室より玄関土間越しに「公」の空間をみる。入れ子状の寝室の周囲を子供室とクローゼットが囲む。
撮影:堀内広治
キッチンよりリビングをみる(夕景)。I型のメインカウンターとL型+センター配置のサブカウンター。
撮影:堀内広治
キッチンよりダイニングをみる(夕景)。ダイニングテーブルはアサメラの1枚板とスチール脚で造作。
撮影:堀内広治
ダイニングよりキッチンとゲストルームをみる(夕景)。古材で仕上げた壁の裏は独立型のキッチン。
撮影:堀内広治