府中の家
南側外観。浮造りの焼杉と縦のスリット窓の構成。
■12坪、防火地域
東京西部の私鉄駅前の立地で、建主はその利便性を優先し、土地の狭さと建物計画条件のデメリット(12坪という狭小地、防火地域ゆえ建物も3階建以上となると耐火建築になる等)を受け入れることから計画が始まりました。
コスト(ローコスト)や地盤条件(軟弱地盤のためなるべく軽量化)、施工性の制約(狭い前面道路にもかかわらず交通量が多い)もあり、これらの条件下においては、比較的計画自由度の高い在来木造をベースにした耐火木造が最適であると判断しました。
この耐火木造の認定の範囲では、仕上げの自由度は少ないですが、外壁仕上で認定の取れている仕様の中では、下地を含めた重量が比較的軽い横貼木仕上を選択しました。仕上の木には、木目がぼんやりと浮き出る浮造り状の焼杉を採用した結果、耐火建築でありながら、無機質な表情を回避することができました。
■つながる隙間
建物は、耐火構造による床で区画されることを避け、平面・断面における隙間を設けることを意識しました。この隙間はコンパクトな空間に奥行を与え、気配をつなげています。その隙間を縫うようにエキスパンドメタル製の階段が挿入され、空間が物理的にも一体感を獲得しています。
外壁の開口部もその隙間と呼応するように縦の亀裂となって、光や景色を細分化し室内に導いています。
これら内外の隙間により、建物内に明暗の差が減り空間の行き止まりがなくなることで広がり感に寄与することを目指しました。
隙間によって導かれながら建物を登っていくと屋上のテラスに到達します。
ここは、背の高い集合住宅に囲まれながらも、その隙間から富士山を望むことのできる幸せな場所となっています。
西側外観。道路に面してシンプルな表情となっています。
LDK北西より。
リビング西端のスリット窓と上階につながる細い吹抜。
リビング南東より。
リビングとダイニングの間の細い吹抜。上部とエキスパンドメタルの階段を通してつながります。
リビング東より。正面の壁は時間や天候により明るさや色が変化します。
LDK北東より。北端にはエキスパンドメタルの階段があり、ここでも上下がつながります。
子供室東より。エキスパンドメタルの階段と奥の吹抜により上下がつながります。
寝室、子供室、ロフトをつなげるエキスパンドメタルのうねる階段。
寝室東より。最上階からは富士山を望む屋上テラスに出られます。