特別養護老人ホーム 茜の郷
滋賀県草津市に計画された鉄筋コンクリート造3階建て80床の特別養護老人ホームの計画である。
敷地形状が三角形で居室配置が非常に困難であったが、比叡山、伊吹山、三上山、比良山など名峰霊峰を遠望でき、前面の旧草津川跡地公園に対しても居室を配置する事で、環境に開き、地域に開いた特別養護老人ホームとなることを目指した。
「敷地形状が非常に歪な形状であるが、入居者にとっても職員にとっても明るく開放的な生活環境にしたい」というのがオーナー様からのご要望でした。
同社会福祉法人の施設を今までにも数棟設計させて頂いていたので、今までの実績から信頼関係ができている事が決め手であると考えています。
施設の性質上、運営側としては入居者の安全の為に常に目が届くような空間配置が必要となる為、理想的には職員スペースを中心として周りに居室を配置するのが良いが、今回は敷地形状が三角形の為その定石通りのプランが困難であった。そこで、居室を敷地形状に合わせた「ハ」の字型に配置して、「ハ」の字の狭い方に職員スペースを配置する事で全体を見通せるプランとなっている。さらに「ハ」の字の開いた方には共用スペースを設け、常に周囲の景色に視線が抜け、風や光が施設を通り抜ける開放感を獲得しています。
入居者にとっては明るく開放的で、職員にとっては合理的で働きやすい施設にする事は何よりも重要でした。そこでお施主様および職員様とはあらゆる可能性を考慮して何度も打ち合わせを重ねました。その上で、入居者の居室や生活スペースを2階と3階にする事で「安全性」と「快適性」を確保し、1階は事務スペース、厨房といった職員用のスペースの他に、中庭を配した広い「エントランスホール」や旧草津川跡地公園に面した「地域交流広場」を設ける事で、地域住民や周辺環境に対して「開放性」と「関係性」を重視した計画となりました。
お施主様からは「非常に明るく開放的な空間で職員も入居者様も喜んでいる。現在はまだコロナ禍という事もありなかなか地域交流イベントはできていないが、将来的には施設の内外で地域交流の場を開放して、入居者様がさらに楽しくいきいきと生活できる施設にしていきたい」というお言葉をいただきました。
外観の夕景。
敷地は三角形で南側は前面道路から低くなっている。
中庭に面したエントランスホールは、ギャラリーとしての利用も想定されている。
職員コーナー及び食堂・リビング