ASICS 上海尚賢坊フラッグストア
100年前のスペインバロック様式の保存建築をリノベーションした店舗。1階、2階が店舗、3階がイベントスペースとなる。
上海で最も開発が進んでいる淮海中路のエリアに1921年に建てられたスペインバロック様式の歴史建築物群が残っている。スポーツブランドのアシックスがここにフラッグショップを出店することになり、我々がコンペにより指名を受けた。大都市上海、中華民国時代の洋風建築物、日本発のスポーツブランド。多岐にわたる価値観が混ざり合う中で、普遍性を持ちうる力強い空間を作ることが我々の最大の目標であった。
既存の建築は、3階建てで 細かい部屋に分かれており、さらに前後で高さが異なる複雑な構成であった。我々は、いかに顧客を奥へ、上階へと誘うかということを重点的に検討した。前後を隔てる壁は全て撤去してスキップフロアとして移動できるようにし、フロアの一部に大きな吹き抜けを設け、アシックスの代表的なロゴ「アシックス・スパイラル」を意識した螺旋階段を設置することにした。
1階は主にシューズがディスプレイされる。テクノロジーに裏付けされた商品にふさわしいインダストリアルな空間を意識し、テラゾー、木毛セメント板、鏡面ステンレス、木目プリントのアルミルーバーなどの工業製品を採用し、壁面にはLEDディスプレイを設置した。シューズ売り場は木毛セメント板の半円形の壁面で覆われ、発光するアクリル板上に商品が陳列される。鏡面ステンレスの天井により発光アクリル板が反復され、近未来的な売り場を作り出す。奥には試着室があり、エンボス加工のステンレスが青白い光で照らされ、海中のような不思議な体験をすることができる。
2階はライフスタイルに合わせたアパレル売り場であるため、比較的落ち着いた空間を目指した。天井は木毛セメント板に木目アルミで作った格天井とし、天井際にライン照明を仕込んでスポーツブランドらしい躍動感をイメージした。半階下がったエリアはシーズン毎にテーマが変わるイベントスペースとなっており、売り場とはガラス棚板の透過性のある什器で仕切られている。
3階は既存建物の構造を活かしたVIP用のイベントスペースとなっている。1、2階と異なり落ち着いた雰囲気とするため、ウォールナットと真鍮を組み合わせた空間とした。真鍮色のエキスパンドメタルが天井、螺旋階段の周囲、ディスプレイの背板などに張られ、照明を当てることで柔らかな高級感を出している。外観のスペイン・バロック様式にも調和した、懐古的な空間となっている。