大宮の長屋
大阪市の大宮の長屋の改修工事。
七軒長屋のうち二軒をフルリノベーションして、建物全体の耐震性を改善するプロジェクトです。
リノベーションする住まいは国産の無垢材を使うことで温もりのある空間を目指しました。
生活の品質を向上させ、住まい心地のいい住まいになったと思います。
築約80年の木造二階建ての長屋です。
長い歴史の中で、さまざまな改造が行われてきています。
初期に建てられたコアとなる部分は計画的に建てられており、整然としております。
逆に、建物の道路側、反対の奥側にある下屋の部分は住戸ごとにまちまちになっていました。
そういった無計画・無作為に工事された部分に特に劣化が生じ、危険な状態になっていました。
まずはその部分を取り除き(増築にならないよう構造材を残し)、道路側は更新、奥側は坪庭とすることで大きく問題を改善しました。
長屋の特性上、各住戸はうなぎの寝床のように細長いつくりになっています。
住戸と住戸を仕切る界壁があるおかげで、建物は前後方向の揺れに対しては十分な壁の量がありました。
逆に、建物の間口方向(横方向)は必然的に壁が少なくなります。
間口方向の揺れに対する耐力壁を増やすことが耐震性能の向上に必要になります。
間口方向の壁を適所に入れていきながら、間取りが使いにくいものにならないように工夫しました。
部屋と屋根のつながりを、引き戸を用いることで緩やかにし、可変的な住まいの提案をしました。
また、二軒の間取りはそれぞれ変えて多様なニーズに対応できるようにしました。
仕上げ材も住戸ごとに変えて変化をつけています。
改修した二つの住戸は少しずつ間取りを変えています。
より多様なニーズに対応するためで、賃貸住宅としての受け皿を大きくすることを考えました。
また地上げの種類も住戸ごとに変えることで雰囲気の違いが出ています。
賃貸住宅では敬遠されがちな無垢材をふんだんに使いました。
賃貸住宅だからといって更新しやすい安価な新建材を使うことが主流ですが、使うほどに味が出る無垢材を選定してもらえました。
無垢材だからこそそれに見合った丁寧な住まい方をしてくれる方が見つかるのではないかという大家さんの器量が溢れます。
今回の改修で浴室、トイレなどの水廻りを更新しています。
これは大阪市の空き家対策の補助金を活用しています。
水廻りを改修することで空き家が減り、街にとってもいい影響があるためです。
階段も安全性のある勾配に造り替え、機能的にも住みやすい住まいを実現できました。