終の棲家フルリノベ

生まれ育った実家の雰囲気を残しながら新しいデザインを施しました。左の玄関収納のドアや正面の突き出し窓のガラスは既存の家のガラスを利用しています。玄関床はそのまま使用しました。
古い家なのでとにかく寒い、また地震も心配なので耐震改修をしたい、動線上使い勝手が悪いのでなんとかしたい。ただ和の家の雰囲気は気に入っているので変えたくない。風が通るので遮りたくないなど具体的にイメージを持たれておられました。
耐震性を加味しながらお施主様の想定を超えるプラン(動線計画)をご提案したところ、とても気に入っていただき、デザイン的な方向性も賛同していただきました。また打合せが長くなっても親身にお話を伺わせていただいたところも信頼して依頼していただけたのではないかと思います。
耐震構造上抜きにくい柱や梁も柱を移したり、梁を重ね合わせたりしてご希望の間取りに合わせていきました。簡易耐震診断では出来ないことを耐震計算をすることでプランを大きく変えることなく設計しました。また既存の家に使われていた昭和型板ガラスはとても味があり、残したいとのことでしたので内部の建具にできる限り使用させていただきました。床はヒノキの無垢板、土壁を剥がしながら断熱材を仕込み、温かみのある空間を心がけて設計しました。

外観は気に入っておられたのでほとんど変えていません。屋根瓦を軽いセラミック瓦に葺き替え、窓シャッターと既存雨戸を使い分けながら自然な形で残しました。

ダイニングキッチンは現代風に使いやすさを考慮しました。オープンキッチンのダイニングから続く奥の部屋は昔増築をされた和室をリビングに仕立てました。構造上どうしても抜くことが出来なかった柱は化粧柱として残しています。右のドアはパントリーです。キッチンドア横の窓方向からはとても良い風が入るとのことで、カップボードと冷蔵庫・パントリーの位置は何度も時間をかけて打合せを行いました。

奥のリビングは天井が低かったので抜き、既存の梁を現しにして広い空間としています。北に中庭、南にデッキと芝生が広がる心地よい部屋に生まれ変わりました。カーテンはバーチカルブラインドにして閉めていても風が入るようにしています。

キッチンに立って見た写真です。左の風を通す窓と正面和室の間に入るFIXガラスは既存の家の昭和型板ガラスを使用しています。やわらかい表情が安心するそうです。和室の障子は2枚引込でFIXガラスの前に引き込むと一間の開口が出来、広縁先の芝生の庭まで見えます。

ダイニング奥の6畳和室は天井を張り替え、別の和室にあった堀込天井をしつらえました。大きくは変えていませんが広縁奥のサッシはダブルガラスの樹脂サッシで一間半の引違い(シャッター付)が入っているのでとても明るく、良い風が通ります。

1階のトイレは将来のことを考えて、廊下からの開きドアと別に洗面所からの引戸を設けました。年齢を重ねて車いすなどになった場合も使いやすいよう配慮しています。

2階は今のところ仕様が決まっていないので、階段をあがったところを将来自由に変更できるようフリースペースとしました。リビングと同様に既存の梁をそのまま残し、気持ちの良い大きな空間にしています。

階段手摺にも既存の家にあった引違いの飾り窓を、正面個室には2枚引込のガラス障子を取り付けています。右の大きな窓は家の正面の象徴的な顔になっていたので、既存の窓と雨戸を利用して内側に2重サッシをつけました。階段の踊り場で高い位置に窓があるので個室の引込障子をあけて窓を開けれるようになっています。