木としっくいの家〜伝統工法を活かした大屋根のナチュラルモダン
深い軒と大きな屋根が特徴です。外壁は、上部の白い部分はしっくい塗り、下部の濃い部分は米杉板張りです。いずれも自然素材ですが、デザインはもちろんですがメンテナンスを考慮してこのようにしています。理由は、上部漆喰はとても吸水性が高いので、汚れは徐々に進行しますが、塗装のように10年、15年程度で塗り替える必要はありません。とは言え汚れは少ない方が良いですので、軒を深くするなど汚れにくいデザインとしています。この写真は築2年後ですが、築9年半の現在もほとんど変わりありません。また、下部の米杉ですが、こちらは塗装しておりますので塗り替えは必要ですので、簡単に建て主さんが自分で塗り替えられるように手の届く高さにしております。が、実際に10年足らず経ちましたが、深い軒に守られているため劣化が遅く、これまでは塗り替えておりません。およそ10年強が塗り替え周期のようです。また、正面2階の窓は、アメリカ製の木製上げ下げ窓です。これはコスト的にも日本製と変わないので、よく使っています。
日本の木の家の良さ、つまり、日本の良い木、良い大工、良い技術を活かしたい。でも、地元の工務店だとデザインと使いやすさに不安がある。そこで、建築家に頼む事を決し私と出会う事になりました。特にこの建て主さんは、アメリカでも生活経験もあり、生活は合理的、機能的にしたい、デザインもナチュラルだけどモダンにしたい。その結果がこの家となりました。
1、内外の木の家に精通している事。日本の木材、工法の事を良く知り、さらに欧米の木材、工法にも知見と経験が豊富な事。
2、コミュニケーション能力。施主とのコミュニケーションはもちろんの事、伝統的な大工と共同出来る事。
3、デザインの力。デザインの幅が広いので、「自分らしいデザインをしてくれると思った」こと。
伝統的な木組みを活かした、木としっくいの家です。木材は、乾燥技術と加工技術の高さとコストを検討した結果、熊本県の小国杉を採用しました。特に、加工は熊本でも名のある大工さんの手刻みですが、コストはとても安価ですが、これは、ほんとうに見応えのある木組みです。
内装のしっくい塗りは、私の事務所が某左官屋さんと開発したオリジナルですが、安価ですが、本物の自然素材ですので、調湿製にすぐれ、夏の涼しさは格別です。
木材の品質、大工の腕、しっくいの効能、そして全体のデザイン、皆たいへん気に入ってもらいました。
構造躯体の全景です。木材は熊本県の小国杉、加工は熊本の大工による手刻みで、建て方には熊本から来てもらい、埼玉の大工とのコラボレーションで建てました。見事な巧みの技で、この後埼玉の大工たちの見学が相次ぎました。
基本的な木組みは金物を使わない、長ホゾ込み栓、追っ掛け大栓、渡り顎などの伝統的な仕口加工です。
リビングダイニングから続く和室の続き間です。日本的な続き間を、現代風にデザインしました。
リビングの床は国産の栂材です。天井のしっくい塗りは、少しR型に折り上げる事で空間の変化と、間接照明の効果をもたらしています。
和室は一部吹き抜けとし、空間に変化を与えました。これにより、隣り合う洋風のリビングダイニングと調和をはかりました。
玄関はテラコッタの床です。テラコッタは木としっくいにとても合う素材です。
階段は、2階のトイレの上部から高窓により明かりを採っています。階段の建物の中央や北側に配置される事が多いので、自然の明かり取りにはこのような工夫が必要です。
リビングからテラスへ出るテラス戸は木製で、全開出来るようになっています。ガラス面を大きくとる事でより開放性の高いデザインをなっています。