ふたつの庭のあるいえ|金山眞人建築事務所
東京郊外の閑静な住宅地に建つ二世帯住宅です。空間の組み立てや動線、視線の通りなどを慎重に計画することで、独立性と連続性のバランスを取り、二つの世帯が気持ちよく生活を楽しめるように考えました。光と風が通り抜ける気持ちの良い住宅とすることができたのではないかと思います。
海外勤務が長かった子世帯ご家族ですが、この度、ご主人が育った地に二世帯住宅を建ててお母様と同居することに。
「やはり完全分離形が良いのでしょうか」「日本と海外、両方の住体験の良いところを上手く取り入れるには、、、」「暑いのが苦手なのですが」「柴犬を飼いたいのですが、屋内で飼っても大丈夫でしょうか」
初めての住まいづくり、勝手が分からないことも多かったことでしょう。
「金山さんのご提案には合理的な理由があるのですね」
依頼者の希望や悩みを引き受けつつ、部分最適解でないトータルな形での建築を、合理的な根拠に基づいて提案できたことではないか、と感じています。
外観は街並みに馴染むよう、緩やかな勾配屋根をかけて奇をてらわずにシンプルに。白で纏めた内外装に木を組み合わせ、モダンなテイストの中にも暖かさが感じられるようにしました。
子世帯のリビングは、海外生活の体験や、これから飼うペットのことを考えて、二世帯共用の玄関から連続する土間空間としました。このことで、二世帯の物理的な距離と空間的な距離が上手く調整できたように思います。また、それぞれの世帯が個性を活かして楽しめるよう、イングリッシュガーデンと日本庭園、二つの庭を設けました。
「漸く新居の使い勝手にも慣れてまいりましたが、まだまだやることはありそうです」
お引越しを無事に終えられ、新居で新年を迎えて頂くことができました。この住宅のもう一つの主役であるお庭の工事がいよいよ始まります。
建築家や工務店の仕事はお引渡しでひと段落ですが、クライアントさんは、これからが「家育て」の本番。今後とも末永くお付き合いさせて頂ければ幸いです。
街並みに溶け込む外観。外構は、いつもお願いしている庭・タカニの高荷さんと相談しながら、塀の仕様や既存の樹木や庭石の取り扱いを決めて行きました。
ガラス屋根の玄関キャノピー。キャノピーが大きいのには理由があるのですが、そのために暗くなってしまうといけませんので、ガラス屋根としてあります。
二世帯共用の玄関です。玄関扉はウェルカムな印象となる内開きとしました。これは海外では一般的な形ですが、風雨の強い日本では、雨仕舞の面では不利な点も。そこで大きなキャノピーとした訳です。
子世帯リビングです。床はテラコッタ風タイル貼に床暖房。右手はアルコーブになっていて、ペットケージを設置予定です。奥の一段上がった場所がDK、段差の上はペットは侵入禁止です。
DKからリビングを見返したところです。奥右側の扉が玄関ホール、左は内玄関・勝手口~階段へと続きます。腰には縁甲板を貼って塗装で仕上げました。
ダイニング・キッチンです。床はシタン材にオスモカラー塗。壁は標準品のクロスを貼り一定期間で張り替える、というお考えは海外生活の体験から。
子世帯の2階にある趣味室です。ご夫婦それぞれの趣味の場所であり、CDコレクションの収納場所でもあります。
親世帯のリビング・ダイニングです。右の木の扉の向こうが玄関ホール、左奥がキッチンです。梁をあらわしにするなどして、子世帯より若干木の感じを強く出してみました。
イングリッシュガーデンをイメージしつつ、和の要素も取り入れた素敵な庭になりました。
親世帯前の和風庭園です。おおらかな曲線がやすらぎを感じさせます。