和みの木の家
敷地は道路から幅3mの通路を経て、その奥にメインスペースが広がる旗竿敷地です。
通路部分はカースペース、門扉、門柱、宅配便収納、自転車収納を機能的に配置し
その奥が両側に植栽を施した、日本の石で舗装されたスロープ状のアプローチです。
ご家族全員が家を原因とするアレルギーに悩まされていました。
シックハウスの心配の無い、自然素材の木の家を希望されていました。
ご夫妻共に仕事をされており、朝と夜、週末が貴重な家族の団欒の時間です。
家事を効率的に行い寛ぎの時間をなるべく多く取りたい、家族にとって和みの家であって欲しい
健康的で、高齢化したときでも安心して住み続けたいということが率直な思いでした。
海外旅行の経験から、外国人が訪問しても、日本の生活文化を自信を持って見て貰えるような
そんな日本の木の家にしたいと言うことが基本でした。
木の家の耐久性や断熱材、木材、設備など様々な疑問について、メール相談を受けました。
そのやり取りの中でご信頼を頂き、一緒に土地を探すことになりました。
足掛け7年になり、良さそうな土地があれば現場に一緒に立会い、第三者的なアドバイスを行い
可能性が高い土地についての計画案を作成して検討したりしました。
その途中では、木の家の実例や工事途中の家づくりを見て、具体的に確認して頂きました。
そうしたプロセスのなかで相互に信頼関係が生まれ、祈るような思いで今の土地に出会いました。
同様に基本計画を立案し、全体地業予算の検討などを踏まえて、購入の運びとなりました。
その頃なって、自然と設計契約の手続きが交わされました。
クライアントご家族にとっての和み軒の家とはどんなものかと、土地を見ながら考えました。
旗竿敷地は道路に面している部分が小さく、奥に入っているために、車の通行、喧騒から離れ
静かな環境という良さがあります。
その通路部分のアプローチに工夫をすることで、我が家らしさを演出することができます。
さらに、家族が団欒を過ごす居間を家の広場=ひろまに見立てて、家の中心に配置して
その周りを1階は和室(将来の寝室)、ウォークインクローゼット、洗濯乾燥室、浴室・脱衣室
洗面室・トイレ、キッチン、玄関などが囲み、2階はひろまを吹き抜けにして、その周りを
主寝室、個室、書斎などが囲むような空間を提案しました。
ひろまを中心とした一体的な空間を耐震性、耐久性、断熱性を満足させた木の家が
シェルターのように包み込むことで、安心して、長きに渡って住み続けられる自然素材の木の家
「和みの木の家」というイメージをクライアントご家族と共有できました。
仕事から家に帰ることが楽しくなりました。家に着くとホッとします。
キッチンを中心に回遊的に家事ができるので、家族で分担しやすくなりました。
庭や通路の植物を見ながら季節感じ、床の間や飾り棚に花を飾ったり
楽しむことがたくさんあります。
ひろまから家全体を見渡せることは家族の様子が確認でき、安心して生活できます。
蒸し暑い梅雨時でも、室内は比較的さらっとしていて過ごしやすいです。
アプローチを進むと、二階の大屋根の下に次の間のある玄関の平屋の屋根と庇が来訪者を迎えてくれます。
同じ切妻屋根の重なりが圧迫感を感じさせません。
玄関を入ると、右側の障子越しに丸窓の光が向かえてくれます。
天井と壁は杉皮で染めた吉野和紙の袋貼りで仕上げられ、杉の建具の下足収納や
壁と同じ和紙を張った建具のコートや小物収納が機能的に配置されています。
正面は次の間で、床は畳、脇床の壁の和紙は藍染の吉野和紙の市松の袋貼りです。
お客様や家族を優しく迎えながら、季節の飾りで楽しませてくれます。
ひろまに入ると、2階の吹き抜けから光が差しています。
落ち着いた玄関、次の間とは打って変わって、ダイナミックなひろま空間に包まれます。
家族で一緒に料理するためのオープンカウンターキッチンから、ひろま、和室など
1階のスペースを一望できます。
右側のユーティリティーからウッドデッキと和庭のある庭までの水平空間と
ひろまの吹き抜けの垂直空間が交差し、家の中心軸を造っています。
ウッドデッキと和庭ができる前の画像です。
和室側のコーナーからひろまの北側を見ています。
左側は洗面コーナーになり、中央の奥が2階に上がる階段です。
吹き抜けに面する階段など、キッチン以外のすべての部屋が建具で仕切ることができ
冬場の床暖房を効率的に利用することができます。
床は無垢の北海道の栓で、壁は黄色の鉱物顔料を混ぜて色調を柔らかくした漆喰
天井は吉野や九州の杉の無垢材です。
ひろま北側のユーティティーコーナーから南側を仰ぎ見ています。
ダイニングテーブルの上のペンダント照明は腕木によって吊られ
両側の2階の床梁には間接照明がついています。
夜は木や漆喰に反射する光で、気持ちが和むような表情を魅せてくれます。
南側の2階の窓の前には格子床のキャットウォークがあり、メンテナンスも容易です。
一番上のハイサイドライトの窓は、家全体の換気窓にもなっています。
ウッドデッキ、和庭ができる前の画像です。
ひろまの脇の和室は、お茶の嗜みもできるように炉を切っています。
天井は2階の梁を耐震上大きくしたため、天井に出てきますが
それを利用して照明を建築化照明にして造り込みました。
民家の木組みのように構成し、その間を吉野杉や萩天井にしました。
壁は日本で最も吸放湿性能が高い珪藻土で仕上げ、床に間の柱は搾り丸太です。
左側の雪見障子からは、手水鉢のある茶庭が見えます。
緩やかな階段を上がると、ひろまの吹き抜けに面するホールに出ます。
吹き抜けとの間に障子を組み込みましたが、クライアントの柔らかいイメージでという
ご要望に基づき、風の流れのような曲線を感じるデザインとしました。
右端の個室への引き戸の縦格子は和楽器の笙のイメージです。
手前のカウンターは多目的で使えますが、現在は下に桐たんすが収納されています。
2階のキャットウォークの西側からひろまを見下げています。
階段ホールの障子があけられて、南側の光が吹き抜けを介して、北側の階段ホール
書斎まで届いています。
ダイニングテーブルの照明を吊っている腕木はなるべく目立たないように三角形で
ぎりぎりまで細くしました。
キャットウォークの玄関側から吹き抜けを見ています。
吹き抜けとの境の壁は、階段ホールと同様に個室にも窓があります。
下を見て、キッチンで食事を作る家族ともコミュニケーションをとることができます。
さらに、その上には回転欄間があり、夏は窓越しに風が室内にも通り抜けます。
吹き抜けは単なる空間ボリュームではなく、風の、光の通り道としても機能しています。
茶庭の手水鉢の方から家の南面を見ています。
家全体の大きな屋根と木製サッシがアクセントになっています。
庇は夏の日差しをカットして、冬は陽光を取り込み、雨から窓を守っています。
ウッドデッキでは休日のランチを楽しみ、和室の前の茶庭はお茶会の路地庭にもなります。