Blueshaft House
世田谷区の狭小変形地に建てられた碧い塔のある家。blueshaft houseと名づけました。
Blue=青、shaftは動力・伝達用の回転軸という意味があります。この住宅には屋上までつながる階段シャフトがあります。シャフトの中にはまわり階段があり、この家のすべての層を貫き上下階への人の動線や、光と風の動きもコントロールします。都会の住宅地では南からの日照や、季節風の取り込みなどすべて教科書どおりにできるとは限りません。抜ける風の方向や、光の入り方は他の近隣の建物の影響もあり、現場での状況判断は設計に関わる重要な要素になります。高層になる建物の1階にいかに光を届けるか、またどのように風を取り込むかは、立体的、建築的なアイデアが必要になってくるのです。今回は少ない窓でも効果的な明るさの確保できるような方向性の検討や、風の抜き方を中心に据えてみました。結果的に1階から取り入れた新鮮空気を木の幹のようにシャフトを通じて室内全体に広げるというシンプルかつ効果的なアイデアを思いつき、設計のコンセプトになりました。人の身体と同じく、このシャフトが体の中心を貫通する背骨のような役割。
その循環が人の健康を保ち、家全体によい血流を促すことにつながるようなイメージです。また、屋上から取り込まれた光はシャフトを通じて上から下へ、壁を反射して室内に光を送り、間接的な明るさを得ることに成功しています。これも自然の力を利用したパッシブなデザイン手法としての1つの提案です。
都内の住宅地は法規制も厳しく金額も高い。その上でどのような土地を買えばよいか、土地探しからお手伝いをさせていただきました。整形地はいろいろなハウスメーカーが建てやすい土地であることが理由で金額が高くなります。そこで、ハウスメーカーでは建てにくい変形地を選ぶことで、土地にかかるコストをできるだけ少なく抑えることにしました。設計事務所の場合は、変形地でも問題なく設計ができますし、その形を生かした住宅を提案することができますので、建築コストにゆとりを持って計画を進めることができました。
世田谷区で現場と事務所の距離が非常に近かったことや、施主様と私が同世代であったことがきっかけとなりました。ハウスメーカーと同等以上の性能を踏まえつつ、本当に自分たちの暮らしにあった家をつくるためには設計事務所にお願いすることが一番よいと考えられたそうです。
北側に道路がある土地を一緒に選んだことで、厳しい北側斜線はかなり有利に計画できました。
北側隣地の場合は通常2階までしか建てられないですが、道路側の天空率を利用することで、屋上に出るためのペントハウスや、小屋裏収納などの余剰空間をプラスアルファとしてつくることができました。設計事務所と土地を選ぶことから始めたことで、お施主さんにとって有効な土地の買っていただくことができました。