土佐の家

●設計事例の所在地: 
高知県高知市
●面積(坪): 
45
●建物の種類(大分類): 
住宅関連
●メインの画像: 
●メイン画像の説明文: 

敷地の奥に既存の2階建ての蔵を残し、手前にあった老朽化した木造住宅を撤去して改築した住宅です。
ご夫婦二人でお住まいになる家ですが、ご主人のモダンアートのコレクションを飾る、ギャラリーを兼ねた家になっています。

建てる前に依頼者が悩んでいた事・ご希望: 

蔵にはモダンアートのコレクションが数多く収蔵されていて、「大型の絵画を雨に濡れることなく蔵から家に搬入できるようにしてほしい。」というご希望がありました。
また、「以前の古家は老朽化が激しく、冬も比較的温暖な高知であっても寒い家だったので、冬温かく、夏は風通しのよい涼しい家にしたい。」そして「高知は台風の通り道で、激しい風雨にも安心して生活できる家。」を希望されました。

依頼者があなたに依頼した決め手: 

私が20年以上前に東京の設計事務所に勤務していた時代に、お客様が院長を務める病院の設計監理を担当させていただいたことから、その後独立して6年前に京都に事務所を移転した私に、ご依頼を下さいました。
ご自宅からほど近いその病院は、経年変化を感じさせないほど日常の手入れやメンテナンスが行き届いており、久しぶりに訪れた私は大変嬉しく思いました。
当時の仕事ぶりや、完成した病院の機能的で快適な院内環境に、とてもご満足をいただいていて、その当時から続く信頼関係から、大切なご自宅の設計についてもご依頼を下さったものと思っています。

●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など): 

もともとあった木造の古家は、おそらく昭和初期に建てられた木造2階建ての家で、当初の計画は、この古家を全面的にリノベーションする検討から始まりました。
しかしながら、詳しい調査をしてみると老朽化が激しく、耐震診断の結果も安全基準未満のため、改修費用も高額になるということで、蔵を残して全面改築することになりました。
また、地盤調査によると支持地盤がかなり深く、表層付近は軟弱地盤となっているため、今後、南海地震や津波が予想されることを考慮して、地盤対策も含めた新築計画を行う事になりました。
 
既存の古家に馴染んでいた素敵な日本庭園があったため、外観のデザインは自然に和を感じさせるシンプルでモダンな平屋の家になりました。
高知の気候に合わせて、庭園のある南側には、大屋根からの軒を深く延ばして、その下に庭園と室内を繋ぐデッキスペースを設けています。
大型のアートコレクションを含めた、数多くの作品を展示するためとはいえ、大きなギャラリースペースを確保できるほどの予算ではないため、少し広めにした廊下と、なるべく大きな壁面を確保したリビングを中心に、アートの展示を行うことにしました。
アート作品の蔵からの出し入れは、和室の北側に大きな開口部を設け、屋根を蔵からの庇と重ねることで、搬出入の問題を解決しました。
軟弱地盤に対しては、確実な支持杭を施工するには非常に大きなコストがかかるため、さまざまな検討の結果、以前に同じような条件で使った経験のある、地盤置換工法を採用しました。

依頼者の声: 

昨年の晩秋に竣工して、この冬をお過ごしいただきましたが、「低温式床暖房は真冬である事を忘れさせるように、快適で過ごしやすい家です。」と、大変ご満足をいただきました。
夏が近づいても、「深い軒に強い日差しが遮られて、リビングの大開口から北側の高窓に風が通り抜け、7月くらいまではエアコンなしで快適に過ごせました。8月になり、猛暑の日々もリビングのエアコン1台だけで十分涼しく過ごせて、青井さんに毎日感謝だね、と話しています。」というお便りをいただきました。

その他の画像: 

リビングダイニングルーム。
現しにした大梁は、地元の山から伐り出してきた丸太材を、熟練の棟梁が手刻みしたものです。
床はやはり地元産の杉板に植物系ワックス塗料で着色したフローリング、壁は珪藻土塗壁の鏝模様仕上げです。

ダイニングとキッチン。
キッチンはアイランド型で、私がデザインして家具職人に製作してもらいました。
天井の仕上には、ヒノキのチップをセメントとともに圧縮したボードを使っています。

5mの天井高を確保したギャラリーを兼ねた廊下です。
最も天井の高くなった北側の壁面最上部には、電動で開閉できる採光・通風窓を設けていて、北側からの柔らかい光をギャラリーに注ぐと同時に、効果的な通風を実現しています。

リビング越しにデッキと庭を見ています。
南側の庭に向かって低くなる天井がデッキの上部まで軒として連続しています。

リビングと床面を揃えたウッドデッキ。
べた基礎内部に温水配管を通す床暖房方式で、床レベルを低めに抑えているため、テラス戸を開け放つと、デッキが庭との一体感をつくってくれています。

仏間と茶室を兼ねた和室です。
天井と床の間の壁は、京都の和紙職人、ハタノワタルさんによる仕事です。
北側の大きな開口の向こうに見えるのが蔵の扉で、アート作品はここから搬出入できるようになっています。

夕暮れ迫る庭側からの外観です。
緩い勾配の大屋根の奥に見えている小さな三角形が蔵の屋根です。

設計者

ユーザー 青井俊季建築設計事務所 青井 俊季 の写真
オフライン
Last seen: 12ヶ月 3日 前
登録日: 2012-07-24 10:10