No33
建物外観
№33の建物は、東経133度33分、北緯33度33分を記念した”地球33番地”のモニュメントの対岸に位置します。
敷地へ接道する道路の北側には、高知市の市街地を貫流する江ノ口川が流れています。
この江ノ口川は、潮の干満の影響を受ける河川であり、大地震時には最高約2m程の津波が押し寄せる可能性があります。
この場所へ、親子3代の住まいを建て替えるにあたり ”ここで住み続けること” を念頭に設計を開始しました。
敷地の地盤高さは、祖父の代より盛土をしていた事もあり、周辺の地盤より約1m程高くなっていました。
そこで、津波時の木造家屋の被害が、基礎のみを残し流されるケースがほとんどであった事を考慮し、この地盤高さに加え高床式のコンクリート基礎とする事で、建替え前と同じ木造平屋としながらも津波時の浸水対策となるように計画しました。
更に高基礎のコンクリートを活かしたキャンティレバーの上にスチールの柱を設け、大階段部分では最大約7mの奥行きとなる深い軒を掛ける事で ”雨に濡れずに車の乗り降りが出来るように ”とのクライアントからの要望へ答えました。
また”住み続ける”という事は、地域や環境との関係性を再確認する事でもあると考え、深刻な水質汚染から徐々に回復しつつある川へ意識を向けるきっかけになればと、各個室を川へ面した配置とし、大開口部へは高基礎を利用したワークカウンターを設けました。
南側に広がる庭園は元々一つの敷地でしたが、建替えにあたり明確に境界を分ける必要がありました。
そこで、将来的に住宅程度の建物が建った後でも、少しでもこの大らかな眺めが感じられる様にと、南北の敷地の高低差がある斜面部分へ多様な植栽を設ける計画としました。
茶室に関しては、当初小間程度の大きさで計画をしていましたが、茶道教室としても利用できる茶室が減少している現状を憂慮したクライアントの要望により、グループ単位でも教える事が可能な8帖の広間とする事にしました。
天井を張らない形式が総屋根裏で、「わび」に徹した表現である事や、広間の茶室では平天井が基本となる事を考慮し、天井へはピッチを変えた竹のルーバーを配し、その屋根裏側へ設備機器を集約する事としました。
廊下幅に余裕を持たせた回遊プランは、将来的な車椅子への対策でもあります。
場所性や使用用途を考慮した結果、2階建てのような大きな平屋建てとなりましたが、このゆったりとした大屋根の家が、地域のシンボルとなり、寄り添い包み込むような存在になることを望みます。