【ツナグ・モノリス】
2階ベランダとエレベーターホールの様子
◾️築45年の診療所併用住宅と地域の街並や環境を維持する建築装置
築45年のRC造、診療所併用住宅におけるエレベーター棟(以後、EV棟)の増築計画です。EV棟は、母屋で暮らす建主の高齢化対策として新設されました。
EV棟の外観は母屋と同化しないようにスレートを下見板張りして“石柱”のような表情を造り、非建築的なスケール感を強調したのに対し、内部は床材や壁の色調、天井仕上げを上下階で区別して、移動の度に場面が切り替わるようにしました。
オブジェでなく、EV棟としての存在意義を持つ建築装置であるから、過剰な形態操作は抑え、母屋との隙間に既存建築だけでは予期できない空間を生み出すこと考えました。例えば、1階診療所の待合にある大窓から見るEV棟を背景に緑と置石を配した坪庭や、周辺建物の高層化でプライバシーを損なった2階ベランダがEV棟と新設した庇により中庭のような場所に再生されたこと、木目調タイルのベランダ床材をエレベーターホール内まで連続させることで、母屋食堂の空間領域を屋外に拡張させたことなどがその成果です。
映画「2001年宇宙の旅」の冒頭で、原始時代の地球に現れた謎の石柱と共鳴した人類が、“道具”を創造するシーンがあります。「モノリス」と呼ばれるこの石柱同様、母屋と共鳴して新しい“空間”を創造すると同時に、地域に対しても街並や環境を維持する装置になって欲しいと考えました。
診療所併用住宅2〜3階の住宅部分で生活する建主の高齢化対策として整備されたエレベーター(以後、EV)棟全景。既存母屋(診療所併用住宅:1階診療所・2〜3階住宅 延床面積467.37㎡)との関係
EV棟側面。診療所は敷地面積726.31㎡の角地で、街並に開けた場所にある
EV棟正面。診療所のアプローチに接続する袖壁裏のスロープ通路からEV棟に入る
エントランスのスロープ通路
EVホール1の内観。床はレンガタイル、幕板はモルタル掻き落とし、天井は木格子の上に障子パネル
EVホール2の内観。床は木目調タイル、幕板はアルミ板、天井にトップライトを設けた
スレート板を下見板張りしたEV棟の外観
母屋から渡り廊下とEV棟のホール2を見る。木目調タイルをホール内部まで引き込み、ベランダに面する母屋食堂の領域を拡張している
2階ベランダ。木手摺は室外機の目隠しとティーカウンターを兼ねている
母屋食堂からベランダを見る