南足柄の家
若いご夫婦が、二匹の猫と一緒に楽しく暮らす家を造りました。
土地は区画整理作業の真っ最中。周りに建つのは新しい家ばかり。
その新しさに違和感を覚え、街に閉じ、内に開いた家を目指しました。
コの字型の平面に中庭を設け、家人だけしか見ることの出来ない空の色、吹き抜ける風。
中庭に植えたのは、「かくれみの」の樹。
それは街と緩やかに繋がり、時として自分だけの居場所を求めたいと考えた、家のコンセプトを象徴するかのよう。
室内は和モダン・テイストで、まとめています。
求めたのは<古さ>ではなく、<落ち着き>。
大人の家としての凛とした佇まいと、品の良さ。
朽ちていくのではなく、味わい深くなっていく家でありたいと願った家です。
若い御夫婦の家なので、和風モダンのテイストを演出しながらも、粋な感覚を残したいと考えました。配色も基調は、白と黒の二色だけ。アクセントカラーも極力抑え、人が住むことで加わる色を想像しながら考えています。
南側には、デッキの上にルーフバルコニーを設けた空間が。
目的の違う外でも内でもない中間領域の楽しさ。
外玄関から、ひと度家の中に足を踏み入れれば、そこは家人だけしか見ることの出来ない場所。家に帰って来ることが楽しくなる瞬間。
細く長いアプローチから入った玄関は、さらに路地のような形状をしています。
喧騒から静寂へと、切り替えるための場。
玄関から2階へと通じる階段は、重さを出さない配慮を。
綺麗な階段の設えは、綺麗な生活へと通じる。
階段が、ただの通路ではない。
景色の一部、愛着の持てる場所にも成り得るように。
シンプルで、掃除のし易い洗面所とトイレ。
簡潔に暮らすためには、潔さも必要なのかもしれない。
窓の雨戸を室内側に設けた主寝室。
閉じるべき時には、確りと閉じたい。
主寝室から繋がるルーフバルコニー。
外であり、内である場所。
ルーフバルコニーから見る景色は、家人だけのもの。
中庭とアプローチを見下ろす。
他者が見ることの出来ない中庭に植えられた「かくれみのの樹」は、この家の象徴かもしれない。