楽しい家
大きな開口部から降り注ぐ光や風。住まいの心地よさに寝そべる姉弟
漠然と私たちはハウスメーカーで家を建てるだろうと考えていました。兵庫県丹波市にある丹波年輪の里で手にしたリーフレットで、芦田さんが手がけられたお家の写真を拝見したとき、ピンときて、ハウスメーカー以外の選択肢もあるのかな、と初めて考えました。
ある工務店さんのプランと芦田さんのものとに絞って、話を進めていた時の話です。私たちは、土地を取得するために不動産屋さんに2つの土地を候補として挙げて頂いて、検討していました。工務店さんが提案頂いた図面について、担当の方に、この図面はもう一方の土地を購入した場合でも使えますか?と訊ねたら、もちろん可能です、と答えられました。
しかし、同じ質問を、芦田さんにしたところ、土地が変われば、条件が変わるので、プランはまた新たに考え直すものですよ、と仰いました。当然といえばそうなんですが、素人目線で考えても、土地が変わって家が同じで良いわけがありません。仕事に対する生真面目さのようなものに惹かれたのも、芦田さんと家づくりをすると決めた大きな要因でした。
3面を道路で囲まれ、残る1面は隣接するマンションの駐車場であるために4面から丸見えであり、ある意味緊張感のある立地でもあります。
敷地規模に比較して、建物規模を抑えた事によって周囲には大きな余白が生まれましたが、これらは家族や住まいの成長に備えたゆとりにも繋がる事と思います。
大きな開口とデッキにこだわったLDスペースは常に気持ちの良い空間でもあり、お子様だけでなく大人もつい、ゴロッと横になりたくなるようなスペースです。
この一繋がりの大空間を意識的に領域を分ける丸柱は、お子さんにとって格好の遊び場で心地良い柱の丸さがより遊び心をかきたてているようです。
やはり、木の表面の傷や汚れなどは、最初はとても気になりました。落書きしないように、汚れた手で木の柱を触らないように、字を書くときは下敷きを必ず敷くように、能登ヒバのお風呂なので入浴中は飛沫をあげないように、などと言っても子供たちが聞く耳を持つわけがありません。子供たちが駒の練習をするのを許可した頃が、ターニングポイントだったでしょうか。そのうち風合いだと吹っ切れました。
引き戸にすることにこだわった玄関を開け閉めする際にその日の天気が分かるのもおもしろいところです。
提案の際に、南中高度という学生以来聞かない言葉が出てきて驚いたのですが、庇の長さや窓の大きさや位置、塀の高さまで、きちんと計算、調節されていることに気づきます。日中は照明が全く要りません。陽射しで冬も暖かく、前の家から持ってきたストーブも3年間一度も使っていません。風の通りも良いので、夏にクーラーを掛けることもほとんどありません。日当たりは光熱費に直結するので、とても助かります。
また、デッキにつながる大きな開口部分にこだわって、最後の最後まで、予算との折り合いを見ながら、実現することを選んだのは、本当によかったです。この解放感がとても気に入っています。近所の方に気楽にお声掛け頂いたり、子どもが集まって、動物園、もとい幼稚園のようになったり、昔の縁側のような空間を作りたかったのです。たまに降る雪が、床と同じ高さで積もるのを眺めるのもなかなかのものです。天気の良い日や星いっぱいの夜に、デッキで食事をすると子供たちはとても喜びます。大人からするとほんの数メートル移動しただけなのですが。
デッキで寛ぐ姉弟。全開口サッシを開け放つと中と外が繋がります。
障子を閉じれば室内は柔らかな雰囲気に包まれます。
吹抜けに繋がるワークスペース。
住いの外観はシンプルに。気候条件や立地環境から、軒の出がしっかりとした住まいは住まいの耐久性にも影響します。