昭和のいえ
昭和30年代に建てられた木造2階建ての住宅の改修です。元々、和室とリビングであった二つの部屋を一つの部屋にした居間です。天井は当時のまま、柱も化粧せずあえて埋木でシンプルに、また建築当時から使われている木製建具を利活用することで、これまでの生活の記憶といったものを随所に織り込みました。
予算と耐震補強について、特に関心を持たれておられました。
生活の記憶を大切に設計に活かそうとする姿勢、と伺っています。
昭和34年に建てられた木造2階建ての住宅の改修です。我々建築家は新しい建物をつくることはできますが、時間を経た空間をつくることはできません。この住宅の改修にあたり、既存の建物に敬意を払い、丁寧に読み解くことを意識しました。生活を刻み、時を経てきた住宅の空気感をいかに残していくか、をテーマに様々なしつらえを試みました。丁寧にヒアリングを行いこの家屋で過ごされた時間を追体験し、残すもの/残さないものを、観念的な歴史的なるものから、具体的な部位や素材、大きな事柄から細部に至るまで、吟味し一貫した計画を心がけました。その姿勢は、建具の再利用や枠の見せ方、床材など様々な様相を孕んだものとなりました。
予算と耐震補強について、特に関心を持たれておられましたが、それに対し、予算についてはローコスト化の観点から室内からの全面リフォームとし、耐震補強も室内からの工事としました。また耐震補強工事の自治体の補助金の獲得も設計に合わせ一貫して行うなどの工夫をしました。
また空間については、「想像していた以上にしっくりとくる場所で、ここで過ごした記憶がよみがえり、新しい生活スタイルにもあっていて、建替えでなく改修にして本当に良かった」とおっしゃっていただきました。
連続する障子と座敷からみる丸窓のしつらえ
元々、和室と洋間のリビングであった二部屋を一部屋としました。障子は既存のものと新しく新調したものとが並んでいます。一部天井は当時のままです。
2階の和室。痛んでいた天井を外して小屋組を現して広々とした空間としました。
元々の建物に使われていた寄木を丁寧に取り、補強して再利用しました。趣きのある空間となりました。
柱の埋木の詳細。柱の傷もあえて化粧を施さずシンプルに埋木で処理をしました。柱の細さが際立ち空間を凛とした表情に仕立ててくれています。
至る所に、建設当時から使われてた木製建具などを利活用し、空間に趣きを与えています。
レトロな照明器具。大正時代の江戸切子の照明器具を探してきて取付けました。工業製品でない手あかが残るこのような照明器具は空間に潤いを与えてくれます。
2階和室の現しにした小屋組